成人後の定期検診が
必要な理由と
検査内容について
成人後の定期検診の重要性
視力が良くても、目の健康状態が良いとは限りません。
前回は、強度近視が招く眼の病気について、
両国眼科クリニック院長の岩崎美紀先生にお話を伺いました。
今回は、成人後の定期検診の必要性や、 定期検査の内容、
予防と早期発見のためにできることについてお聞きします。
なぜ検診が必要なのですか?
強度近視の方の目は、成長の過程で奥行き(眼軸長)が過剰に伸び、前後に長い形状になっています。この眼球の伸長によって、無理に眼球内部の網膜や視神経が引き伸ばされ、組織が薄く弱くなってしまうのです。
眼鏡やコンタクトレンズ、あるいは手術で視力を矯正しても、一度伸びてしまった眼球の大きさが元に戻るわけではありません。
網膜や視神経が引き伸ばされ、組織が薄く弱くなっている状態は、加齢とともにトラブルを引き起こしやすくなります。
特に緑内障や網膜裂孔は、自覚症状がないまま進行してしまう病気です。Haarmanらの報告(2020年)によると、強度近視の方はそうでない方に比べて、緑内障の発症リスクは2.92倍、網膜剥離のリスクは12.6倍、近視性黄斑症のリスクは845倍も高いことが報告されています。「最近見えにくい」と異変に気づいた時には、すでに病気が進行しているケースも少なくありません。見え方に変化がなくても、早期に自分では気づけない目の奥の異常を見つけるために、眼科での定期的な検診を受診しましょう。
定期検診ではどんなことをするのですか?
強度近視の方に受けていただきたい検査は、瞳孔を開いて目の奥を調べる「眼底検査」と、網膜の断面を詳しく見る「OCT(眼底三次元画像解析)検査」です。
眼底検査では網膜の隅々までチェックし、網膜剥離の原因となる穴や出血がないかを確認します。OCT検査では、緑内障による視神経のダメージや、黄斑部の微細な変化を早期に発見できます。
眼底検査やOCT検査は、健康診断や人間ドックに含まれていない場合があるため、個別に眼科で受診してください。
すぐに受診すべき危険なサインはありますか?
定期検診を待たずに、すぐに眼科を受診すべきサインがあります。
一つは飛蚊症です。飛蚊症は、目の前に虫やゴミのようなものが飛んで見える症状です。浮遊物が急に増える、形が変わるなどの変化があった場合は、網膜に穴が開いている(網膜裂孔)可能性があります。
また、目の前でピカッと光が走る光視症や、視野の一部がカーテンで遮られたように見える場合、文字や直線が歪んで見える場合も、眼科を受診すべきサインです。光視症や視野の欠けは網膜剥離や眼底出血などの可能性が高く、放置すると失明につながる恐れがあります。少しでも違和感を感じたら、自己判断せずに専門医に相談しましょう。
予防と早期発見のためにできることはありますか?
まずは、定期検診を受診することです。強度近視の方は、自覚症状がなくても病気が進行していることがあります。1年に1回以上は、眼底検査やOCT検査、視野検査を受けてください。次に、ライフスタイルの見直しも心がけましょう。
目を休ませる:30分近くを見たら、一度遠くを見て目を休ませてください。
距離と照明:読書やスマホは30cm以上離し、適切な明るさに調整してください。
屋外活動:1日2時間程度、屋外で過ごしましょう。自然光の下での活動は、近視進行の抑制に関与すると言われています。
また、強度近視は遺伝する傾向があるため、親御さんが近視の場合、お子様の目の管理も重要です。特に学齢期は近視が進みやすいため、学校検診で指摘されたら早めに眼科を受診してください。
現在は、低濃度アトロピン点眼やオルソケラトロジーなど、近視の進行を抑える治療法も増えており、年齢や生活スタイルに合わせて選択できます。適応や副作用について、眼科医に相談してみると良いでしょう。
最後に岩崎先生より一言
「病気が見つかったらどうしよう」と不安に思う方もいるかもしれませんが、自分の視力を守るためにも、目の病気の早期発見が大切です。例えば、網膜剥離になる前の裂孔の段階で見つかれば、レーザー治療で穴を固めて剥離を未然に防げます。
また、緑内障も早期から点眼治療を始めれば、眼圧をコントロールして進行を食い止め、将来的に失明のリスクを回避できる可能性が高くなります。人生100年時代と言われる現在、80代、90代になっても自分の目で生活するために、年に1回は眼底検査を受け、ご自身の目の状態を正しく把握してくださいね。