強度近視のリスクとは?
進行が招く5つの病気と
対策について解説
強度近視が招く眼の病気
近視は眼鏡やコンタクトレンズで矯正すれば不自由なく生活できるため、
「単に目が悪いだけ」と軽く考えられがちです。
しかし、視力が低下し続けた強度近視の目は、
将来的に失明につながる病気のリスクがあることをご存知でしょうか。
今回は、両国眼科クリニック院長の岩崎美紀先生に、強度近視が進んだ目の構造と、
強度近視が原因で起こりうる目の病気について、お話しを伺いました。
近視が進むと、目の中で何が起きているのですか?
近視には2つのタイプが存在します。一つは「屈折性近視」。角膜や水晶体の光を曲げる力(屈折力)が強くなりすぎるため、網膜の手前でピントが合ってしまいます。もう一つは、眼球の奥行き(眼軸長)が正常よりも長く伸びてしまう「軸性近視」です。
ほとんどの近視の方は、後者の軸性近視に該当します。眼球の奥行きが長くなると、ピントが合う位置よりも網膜が後ろに下がってしまうため、遠くの物がぼやけて見えてしまいます。
この眼球の伸長は、成長期に眼球が大きくなることで起こりますが、必要以上に眼球の奥行きが伸びすぎてしまうと、網膜や視神経が無理に引き伸ばされ、眼球の組織が傷つきやすくなるのです。
強度近視の目は、大きく膨らませた風船のように、今にも割れそうなデリケートな状態です。眼球の外壁である強膜が奥へ奥へと伸びていくのに対し、内側に張り付いている網膜や視神経はうまく伸びることができません。無理やり引き伸ばされた網膜や視神経は薄く脆くなり、様々なトラブルを起こしやすくなります。
眼鏡やコンタクトレンズを使えば、網膜上にピントを合わせて見える状態となり、日常生活に支障が出ないですよね。しかし強度近視の場合、眼球の組織が弱くなっている状態は変わらないため、将来的に失明につながる病気のリスクが高くなります。
強度近視が引き起こす病気とは?
ここでは、特に注意するべき5つの病気や症状について説明します。
まず1つ目が「網膜剥離」。引き伸ばされて薄くなった網膜の一部に裂け目(裂孔)ができ、裂け目から網膜が剥がれてしまう病気です。一度剥がれてしまうと、視野の一部が欠けたり、最悪の場合は失明に至ったりすることもあります。強度近視(-6.0D以上)の方の場合、網膜剥離の発生率はそうでない人の約13倍になるとも言われています。
2つ目に注意するべき病気は「緑内障」。眼球の変形に伴って、目の奥にある視神経がダメージを受ける病気です。強度近視の目は、視神経の出入り口である視神経乳頭の形が変形しやすく、緑内障による初期の変化が見逃されやすい傾向にあります。
一般的な眼圧検査や眼底検査だけでは発見が難しいため、視神経の厚みを測定できるOCT(光干渉断層計)検査や、定期的な視野検査による経過観察が推奨されます。
3つ目は、網膜の中心にある黄斑部が傷つく「近視性黄斑変性(近視性黄斑症)」という病気です。眼球が後ろに伸びることで黄斑部に負担がかかり、出血や萎縮などが起こります。
黄斑部は、文字を読んだり細かいものを見たりする場所です。黄斑部が傷つくと、視界の中心が歪む、暗く見えるなどの見え方に影響を与えます。
4つ目は、「網脈絡膜萎縮」や「後部ぶどう腫」です。過度に眼球の壁が引き伸ばされて薄くなると、網膜やその外側の脈絡膜が萎縮します。進行すると、眼球の後ろ側が局所的に出っ張るように変形する「後部ぶどう腫」が起こってしまうのです。
網膜の萎縮や眼球の変形が進むと、眼鏡やコンタクトレンズで矯正しても十分な視力が得られなくなったり、視野の一部が欠けてしまったりするなどの視力障害の原因となります。
最後に、視網膜裂孔や後部硝子体剥離に伴う症状です。薄くなった網膜が引っ張られて裂孔(穴)ができることがあります。前兆として、目の前でピカッと光が走る「光視症」や、虫やゴミのような浮遊物が急に増える「飛蚊症」などのサインが見られることも。
特に、視野に黒い幕が下りたように見える場合は、網膜剥離が進行している危険性が高いため、すぐ眼科を受診してください。
進行を止めることはできるのですか?
完全に止めることは難しいですが、年齢によっては取り組み次第で、進行を緩やかにする方法があります。
まずは早期発見、小さな文字を長時間見ないなど生活習慣の見直しをすることが大事です。特に、子どもの近視は早めに見つけることで、眼科にて対策することができます。
大人については、メガネやコンタクトで矯正して見えているからと過信せずに、定期的に眼科を受診して、今の目の状態を正しく理解しましょう。年に1回眼科検診を受けることで、生涯にわたって大切な目を守り続けることができますよ。