一枚のメガネレンズを全工程、全力でつくる。それがHOYA クオリティ。
HOYA 松島工場 後編
オーダーを受けてから、その一つひとつをつくり出すHOYA のメガネレンズ。第2回「HOYA のテツガク」では、
特注レンズの生産拠点である、長野県のHOYA 松島工場で働く3 人のエキスパートにインタビュー。
後編では工場内の機器開発と、品質管理などの担当者にスポットを当てる。
目視する。手で触れる。
それだけで品質がわかる。
その精度の高さは、
機械では不可能。
HOYA 松島工場では、いくつもの革新的な機器が開発され、人の手によるミスを無くしてきた。一方で、機械には
担いきれない繊細な感覚が必要な作業もある。HOYA クオリティは、人間と機械の共存によって保たれている。

大久保さんは染色装置をはじめ、松島工場で使われているHOYA 独自の機器を開発していますが、具体的には、どのような機器を開発したのでしょうか。
大久保メガネ店でレンズを加工する場合、工場で目印となるマークを印刷します。従来は、アイテムやレンズ設計に合わせたゴム判でマークを印刷していましたが、ズレが生じるほかにも、圧力が掛かって傷ができてしまうことがありました。
そこで考えたのが、インクジェットの技術を使ってマークを印刷する機器です。構想段階の、まだ実現できるかもわからない状態で、会社は開発にチャレンジさせてくれました。現在、その装置は実際に稼働していて、インクジェットになったことでマークを印刷するときのズレがなくなったほかにも、判の押し間違いも無くなりました。

開発しやすい土壌が、HOYA 独自の技術や革新性につながっているのですね。
大久保そうですね。開発という特性上、お話できない部分も多いですが、製造過程において自動化した工程がいくつかあります。自動化の狙いの一つは、人によるミスを無くすこと。特注品のレンズである以上、お客様は早く欲しいわけです。間違いも、納期の遅れもあってはならない。そのような気持ちで、機器の開発に臨んでいます。

鳥海さんはレンズのカットや、加工済みのレンズをフレームに組み付ける作業、レンズの品質管理の担当者です。これらのなかで、人の手だからこそできる作業というのはありますか?
鳥海レンズをフレームに組み付けるとき、染色同様にサイズが数値で出てきます。しかし、その数値通りにレンズを削っても、実際に組み付けする段階で、少し削らないといけないことがあります。レンズをフレームにはめ込むときに、「これではダメだ」とわかるんですね。その感覚は人間しか持ち得ないものだと思います。
HOYAでは、0.1ミリメートルレベルの精度を追及しています。フレームタイプによっては、レンズのわずかなズレが、使っていくうちにフレームのゆがみにつながるからです。よりいいメガネを、より長く使っていただくためにも徹底しているポイントです。
機械よりも、機械を使う
人間の能力が大事。
社員達の経験が自信と誇りとなって
HOYA を支えている。
優れた機械が、優れたメガネレンズをつくるのではない。重要なのは、機械を“道具”として、自在に扱う人間の存在だ。

高い品質をキープするために重要なことは、なんでしょうか。
鳥海基本的には機械を使ってレンズを加工していくのですが、それを管理するのは人。たとえば、同じ機械が10 台あれば、1台ずつの仕上がりにわずかな差が出ます。その個体差を見極めて、自分の手のように操作していくと。それが大事なんですね。機械の維持管理も日常的に行うようにしています。
大久保あとは、製造の工程でいう川上から川下までのすべての責任者が集まって、各セクションの状況を共有するようにしています。
田中一つのレンズができあがるまでに、この工場のなかだけでも、いくつもの工程を通ってきています。担当する作業は違っても、同じ一つのレンズをつくっているわけですよね。つまり、自分の目の前の仕事だけを見ていてはダメだと。工場には約300 人のスタッフがいますが、この意識は全体で共有できていると思います。

レンズとともに、その想いも工場のなかでリレーションされているのですね。
鳥海メガネというのは医療機器ですから。HOYA のメガネレンズを選んでくださった人の眼が、少しでもよく見えてほしいと思っています。私自身、中学生のときにメガネをつくったことがあります。大好きな野球をしていて、夕方になって暗くなると見えづらかった。そのときにメガネをつくり、「こんなにありがたいものなのか」と感じたんですね。それから就職活動をするときに、メガネを通じて世の中に貢献できればと思った。そのときの気持ちは、いまも変わっていません。
約300人ものスタッフが、そして無数の機器が、共同体となって
一枚のレンズをつくり上げる。人々の暮らしを支える高品質のメガネレンズを
自らの手で生み出しているという事実は、一人ひとりのスキルを高める
活力であり、誇りとなる。その想いこそが、時代や場所を超えて、
HOYA のなかで受け継がれてきた。そして、これからも——。